タンパク質をはじめとする生体高分子は固有の生理機能を有するが,それは個々の分子の特異的な立体構造と密接に結び付いている.従って,あるタンパク質の機能を分子レベルで究明するためには,その立体構造を明らかにする必要がある.また人工タンパク質のデザインや新薬の開発においても分子の立体構造に基づく戦略がますます重要となっている.
タンパク質の立体構造は X 線結晶解析,NMR(核磁気共鳴)等を用いて決定される.論文等に発表する際は,その原子座標の情報を Protein Data Bank(PDB)へ登録することが義務付けられている.登録された構造は一意的にID codeが割り振られて一般に公開されており,ホームページ(http://www.rcsb.org/pdb/)にアクセスして,座標ファイルを自由にダウンロードできる.ダウンロードした生体高分子の座標ファイルを使って,パソコン上で立体構造を表示するための優秀なソフトが,市販品,フリーソフトを問わず多く出回っているが, 本実習では,Delano Scientificが公開しているオープンソースの分子グラッフィクソフトで あるPyMOLを使用する.本ソフトはWindows,MacOS X,Linuxといった殆どのシステ ム上で稼動し,ホームページから必要なファイルをダウンロードすることができる.
実習では RNA 分解酵素であるリボヌクレアーゼ T1 を取り上げ,その基質アナログである 3’-GMPとの複合体の立体構造をパソコン上で表示してみる.さらに,リボヌクレアーゼT1 の天然構造(活性型)と熱変性により失活した構造を比較することによって,タンパク質の立体構造と変性に対する視覚的理解を深める.
- 担当者: 横堀 伸一 yokobori